?E障害児水泳における背泳ぎ
京都市立呉竹養護学校 森田美千代
1. はじめに
障害児の水泳を語る時、泳ぐ種目を考える前にどんな障害がどのようにあるのかを考えることが大切である。
障害と一言でいっても様々であり、仮に障害名が同じであっても障害のあらわれ方は一人一人違う。性別、年令によっても違うというように障害をひとまとめに考えることはできない。私の勤務する肢体不自由の養護学校の児童・生徒をみても身体障害だけでも様々であり、他に視覚障害、聴覚言語障害、知的障害を合わせもつ者もいる。10人の障害児がいれば、10とおりの障害の実態があるというようにとらえる必要がある。
2. 背泳ぎのまえに
背泳ぎについて語るまえに、「障害のある人が泳ぐということ。水に入るということ。」について考えてみたい。
障害のない人が初めて水に入るとき、‘まず水の中を歩いてみましょう’ということからスタートする場合が多いと思う。しかし、日常車椅子を使用しているなど歩くことができない人にとっては「歩く」というより、水の中に「立つ」ということが困難なのである。「立つ」「歩く」ということが一人でできないため、介助してもらって「立つ(立位姿勢)」・「浮く」ということを経験する。しかし、上向きまたは下向き姿勢で浮かせてもらっても、その姿勢を立て直して「立つ」ということは非常に困難である。しかし、水はその特性から陸上では歩けない人の足を、浮力・水圧を助けとして動かし、歩かせてくれたりもする。水に入ることは、水温・水圧を身体、皮層が感じ感覚刺激になったり、内藏を発達させたり、呼吸、心肺機能の向上等も促すと考えられる。
“泳げる”ということは、「浮いて呼吸を確保しながら進む」ということだと考えるが障害のある人にとって、「水に入る、泳げる」ということは単に「泳げる」というだけでなく、水中での自由を獲得するということであると同時に、陸上ではできないことを経験するということである。水に入る、プールヘ行くということは身体機能面だけでなく生活の場面・質を変化させ、広がりを持たせるものでもある。
3. 何故、背泳きなのか
障害のある人にとっても、ない人にとっても、背泳ぎは、クロール、平泳ぎ、バタフライと違い、上向き姿勢で浮いて進む泳ぎである。常に口元が水面上にあり呼吸の確保(息継ぎ)ができる泳ぎである。
背泳ぎを上向き姿勢での移動と考えた場合、腕を水中から抜いて回し頭の上方に入水するという腕のかきができない人は、水中で手をかく‘スカーリング’をすればよいし、腕・手を使うことが困難な場合は、足の動き(キック)だけで浮いて進めばよいのである。このように、さまざまな障害をもつ人にとって背泳ぎは、その障害の実態に合わせでいくつものパターンが考えられる泳ぎなのである。
(1)呼吸の確保という点から
下向き姿算で浮いている時、水中にある頭・顔・首を息継ぎのために動かそうとしても障害によっては、前後・左右・上下等に自由に動かし口元を水面上に出すことが困難である。しかし、上向き姿算では、常に口元が水面上にあるので呼吸の確保(息継ぎ)が容易である。様々な障害のあ
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